2024年11月26日火曜日

山田五郎・オトナの教養講座で解説された「経度の発見」に感心した

このところ愛聴している山田五郎さんのオトナの教養講座というYouTubeチャンネルですが、最近はとりわけ「経度の発見」の歴史を解説した動画に嵌っています。この動画では、まずウィリアム・ホガースの版画、「放蕩一代記」の精神病院のシーンに描かれている、経度を求めようとするほど精神を病んでしまった人の像を話のマクラにして、どのようにして経度が決定されるに至ったのかを非常にわかりやすく説明されています。

緯度の算出は非常に古くから知られていて、学校の理科で習った通り、太陽の南中高度か北極星の角度で簡単に割り出すことができますが、経度は簡単には計算できません。動画では、幾多の偉人たちが悪戦苦闘した様子が紹介されます。まず、ガリレオガリレイが先鞭をつけ、天体観測または正確な時刻の測定によって経度が算出可能という予言をしたところからスタートして、振り子時計の発明やホイヘンスやロバートフックなどの改良の試みが紹介されます。その後、1707年に経度の誤認から生じたとされるイギリス海軍のシリー諸島沖海難事故を受けて、イギリスが経度法を制定し、経度の測定法を開発した者に対して高額な賞金をかけ、その審査のための経度委員会が設置されるところまで説明されます。この経度委員会にはニュートンやハレーと言った各学問分野の大御所が名を連ねたものの、該当者がなく開催されることなく日を経てしたのだそうです。しかし、そこへ突然ヨークシャーで大工をしていたという時計職人、ジョン・ハリソンが高精度の時計を開発したことによって初めて委員会が開催されます。その後、ジョン・ハリソンによる幾度もの改良をへて時計はサイズや精度が格段に向上する様子が丁寧に解説してくれています。その知識の豊富さとわかりやすさは、さすが時計好きの山田五郎さんだと心底感心しました。私としては、ハリソンの3号機(H-3)から4号機(H-4)の間の進歩が凄くて驚きました。時計派のハリソンは開発の途中で天体観測派から意地悪されたそうですが、そのような状況でもたった独りで、あそこまで到達できる才能というか執念は感服です。一方の天体観測派も月と他の天体の位置関係から経度を割り出す、月距法というのを開発して、賞金をハリソンに先んじて手にしたそうです。ハリソンも何とか存命の内に賞金を手にできたということで良かったです。こうして時計派と天体観測派が互いにしのぎを削ることによって、イギリスはどこよりも早く経度の測定に成功し、7つの海を制覇したという解説には、とても説得力がありました。技術ってすごいですね。

最後に、イギリスにはしばしば物事を根本から変えるようなゲームチェンジャーとなる存在が出るのだという五郎さんの指摘には大変興味を持ちました。音楽のビートルズとかコンピューターのチューリング(チューリングマシンの人ですね)を挙げられていましたが、私の専門とする分子生物学・構造生物学にもイギリス出身の偉人が沢山います。まずはDNAの二重らせんモデルを提唱したワトソンとクリック。DNAの塩基配列決定法を開発したサンガー。あとは重原子同型置換法という、蛋白質の構造決定に多大なる貢献をしたペルーツなどが代表的かと思います。最近ではAlphaFoldの開発でノーベル化学賞を受賞したハサビス博士もイギリス出身だそうです。同じような島国なんだから、日本も誰かゲームチェンジャーが出てくると良いですけどね。

色々考えさせられる素晴らしい動画でした。