久しぶりに松本清張著、「馬を売る女」を読み返して、清張ワールドを楽しみました。この本は短編集で、表題作の他、「駆ける男」と「山峡の湯村」の2作が収蔵されています。
私としては、「馬を売る女」が好きです。あまり言うとネタバレになってしまいますが、この小説には、以前紹介した「鉢植えを買う女」のように小金を貯めて会社内で個人的な高利貸しをする独身の女性が登場します。「鉢植えを買う女」との違いは、更にもう一つ副業を持っている点で、その副業が競馬の情報屋です。これは社長秘書という立場を利用して、社長の所有する競走馬の状態に関する情報や、社長の馬主仲間からもたらされるディープな情報を極秘裏に会員に伝えて小銭を集めるというものです。結局、それが元で…となります。この辺りがとても清張的です。さらに犯罪が露見するのも、折角迷宮入りとして捜査が打ち切られかけていた矢先に、犯人が自ら不要な申告をして…というお馴染みの展開になります。短編を読みまくった私には安心の展開です。
「駆ける男」は殺害方法が面白いです。何もそんな持って回ったやり方しなくても、と思います。「山峡の湯村」は田舎のドロドロとした人間関係が良いです。海女さんは独特な言葉を使うんですね。