2022年10月27日木曜日

生化学実験のTips(蛋白質精製)

学生の時から生化学の実験を始めて早幾星霜という感じで、今ではすっかりベテランです。色々な実験のTipsをどこかにまとめておこう思っているのですが、一向に気が向きませんでした。とりあえず思いつくままに、ここにコツコツと書き溜めて置ければと思っております。

BigDyeで反応させたシークエンスPCR溶液の簡単エタ沈(エタノール沈殿)
現在の研究室では、DNAの配列解析は、シークエンスPCR溶液を乾燥ペレットにして受託会社に送付しております。シークエンスPCRは溶液量を10uLにして行っています。以下のプロトコールは、PCR後の溶液に対して行います。
1. Add 40uL 80% Ethanol
2. Incubate room temperture (r.t) for 15min
3. Centrifuge 150,000rpm, 10min, r.t
4. Remove sup
5. Add 125uL 70% Ethanol
6. Centrifuge 150,000rpm, 10min, r.t
7. Remove sup & Dry up
8. Submit to Azenta

蛋白質精製の基本、SDS電気泳動
自作CBB染色液 (500mL)
CBB R-250: 1.25g
10% EtOH: 250mL
10% Acetic acid: 50mL
MilliQ: 200mL
*メタノールではなく、エタノールで作るのがポイントです。廃液の処理が楽だからです。ゲルを染色した後の脱色は水道水を入れてレンジで温めるだけで色が抜けてくれるのですごく楽です。染色した後の染色液は、別ボトルに回収しておけば、何度も使用可能です。

ゲル作成装置(10枚用ミニゲル作成槽兼グラジェント作成槽、NA-1610、日本エイド⁻株式会社)
電気泳動のゲルが10枚まとめて作成可能なのでとても便利です。
私が普段使用している12% アクリルアミドゲル10枚用のレシピは下記の通りです。
まずSeparateゲル溶液を全量入れ、イソプロパノールの重層します。ゲルが固まったらイソプロパノールを除き、Upperゲル溶液を1枚のゲル辺り1.6mL程度入れ、コームを指します。

                                                                    Separate        Upper
30(w/v)%-アクリルアミド/ビス混合液(29:1)        39.6mL        2.65mL
(ナカライテスク株式会社、06141-35)
WIDE RANGEゲル調製用緩衝液(4倍濃縮)             24.75mL    5mL
(ナカライテスク株式会社、07831-94)
MilliQ水                                                            33.66mL    12.15mL
10%(w/v) SDS                                                990uL        200uL
10%(w/v) APS                                                990uL        200uL
TEMED                                                            66uL        20uL

普段は10枚ずつまとめて作成し、コームが刺さったままの状態でゲルの周りを濡れたキムワイプで覆い、ラップでくるんだ状態で冷蔵庫に保存しています。ゲルが乾燥しなければ1~2週間くらいは使用可能です。

2022年10月14日金曜日

三代目・古今亭志ん朝の「井戸の茶碗」を聞きながら

 お年柄デスクワークが多いのですが、仕事中は大体Youtubeの音楽や落語などを聴き流しながら進めております。最近のマイブームは昭和の落語家、三代目・古今亭志ん朝の落語を聞くことです。自分が幼いころに聞いていた落語家さんで、懐かしさも相まって心地よく聞かせていただいています。軽妙かつハイテンポのしゃべくりの中で、見事な演じ分けに感心することしきりです。大事なところの間も絶妙で、仕事をしながらも、ついつい引き込まれてしまいます。しかし江戸時代の風俗や言葉遣いなどについて、所々わからない言葉などが出てくるので、折角なので調べて載せておこうと思います。

お気に入りの演目の一つが井戸の茶碗です。

井戸の茶碗

あらすじ:

屑屋の清兵衛(せいべえ)さんは周りから「正直清兵衛」と呼ばれるほどの正直者でした。いつものように裏長屋を流して歩いていると、身なりは粗末ながら感じの良い娘さんに呼び止められる。娘さんの後をついていくと、娘さんの父親から屑を買ってほしいと言われる。清兵衛さんが屑を8文で買うというと、父親からはお金がもっと入用なので仏像を200文で買ってくれと頼まれる。目が利かないから扱えないと清兵衛さんは断るが、どうしてもと頼むので根負けして引き取る。何でも父親は千代田卜斎(ちよだぼくさい)と言い、かつては武士だったが現在は浪人しているとのことだった。

清兵衛さんが仏像を籠に入れて流していると、細川様の御窓下を通った時に、窓からお侍さんに声をかけられる。何でもお侍さんは高木作左衛門(たかぎさくざえもん)と言い、仏像が気になるから見せてほしいと言う。清兵衛さんが高木氏に仏像を見せると、大層気に入り300文で買ってくれた。ところが高木氏が仏像を磨いていると、台座の紙が剥がれて中から50両もの金が出てきてしまい困惑する。高木氏は、自分は仏像は買ったが中の小判は買っていないと言い出し、清兵衛さんを探そうと窓の下を通る屑屋を片っ端から顔を改めるようになる。

当時、清正公様の境内には掛茶屋があり、お昼時になると近くを回っている行商人が集まってきて弁当を使って一服するのが慣習になっていた。その中で細川様のご家来が屑屋を探していることが話題になり、きっと仇討ちだろうと噂をしていると、清兵衛さんが現れ仏像を売った事を話す。すると仲間からは、仏像の首が折れたから手打ちにしてやろうとしているのではないかと散々驚かされる。清兵衛さんがビクビクしながら黙って御窓下を通ろうとするのだが、長年の習慣でつい「くず~い~」と掛け声を発してしまう。その声を聞きつけた中元の良助につかまり高木氏の前に引き出される。清兵衛さんが首をはねられるとおびえていると、高木氏から仏像の中から出てきた50両は自分のものではないので元の持ち主に返してほしいと頼まれる。清兵衛さんが千代田氏のことを話し、千代田氏も喜ぶだろうと快く引き受ける。

ところが千代田氏の方では売ってしまったのだから50両は高木氏のものであると言い、お金を受け取ろうとしない。そのことを高木氏に告げると、高木氏も自分は仏像は買ったが中の小判は買っていないと頑なにはねつける。間に挟まれて弱ってしまった清兵衛さんが千代田氏の長屋の大家さんに相談すると、大家さんの取り計らいで清兵衛さんが10両、千代田氏が20両、高木氏が20両受け取る方向で話がまとまりかける。しかしここでも千代田氏だけは納得しない。そこで大家さんが一計を案じて、千代田氏から高木氏に何かを差し上げて、その対価として20両を受け取ることにしたらどうかと提案をする。千代田氏は渋々承諾し、普段使っている汚い湯飲み茶わんを高木氏に差し上げてお金を受け取る。

このやり取りの評判が細川家中に広まり、感心したお殿様が高木氏の目通りを許した。そこで高木氏が受け取った汚い湯飲み茶わんを殿様に差し出すと、そばにいた目利きの商人が茶碗を拝見し、これは非常に貴重な「井戸の茶碗」だと驚愕する。お殿様は茶碗が気に入り、高木氏から300両で召し上げてしまった。高木氏は300両を前にして、元々は千代田氏の茶碗であるからお金を全部は受け取れないと困ってしまう。そこで清兵衛さんを再度呼び出し、千代田氏に150両受け取らせるようにと命じる。清兵衛さんは嫌々ながら引き受け、150両をもって千代田氏を訪ねる。最初は頑なに受け取りを拒否していた千代田氏だったが、ふと高木氏は独り身かと清兵衛さんに尋ねる。清兵衛さんがそうだと告げると、千代田氏は高木氏の人柄を評価し、娘を嫁がせたい、もし御内儀にしてくれるなら支度金として受け取る、と申し出る。清兵衛さんがこのことを高木氏に告げると、高木氏も承諾する。喜んだ清兵衛さんが、娘さんの事を評して「今は裏長屋でくすんでいますが、こちらに来て磨いてごらんなさい。イイ女になりますよ」というと、高木氏が「いや、磨くのはよそう。また小判が出るといけない」と返す。


調べた言葉:

「売卜(ばいぼく)」:お金をもらって占いをする、要するにプロの占い師。卜斎の台詞に『昼は近所の子供たちを集めて素読の指南をし、夜は売卜を生業としているが、十日ばかり前に雨に打たれたのが元で風邪をひいてしまって…』というのがあります。

「清正公(せいしょうこう)様の境内」:東京都港区にある覚林寺(かくりんじ)の境内のこと。加藤清正を祀っているので清正公様の愛称がついている。