2025年7月21日月曜日

「眼の気流」(松本清張著、新潮文庫)の「影」が心に沁みる

 久しぶりに松本清張の短編集「眼の気流」を読み返しました。この本には、表題作の「眼の気流」の他、「暗線」、「結婚式」、「たづたづし」、「影」の5作品が掲載されています。表題作である「眼の気流」は、清張作品の重要なキーワードであるタクシー運転手が前面に出た作品です。中央自動車道沿線が出てくると安心感すらあります。鉄板ネタです。

この中で私が一番惹かれたのが最後の「影」という作品です。この作品の主人公である宇田道夫は中国地方の鄙びた温泉宿の主人で、そこへ尾羽打ち枯らした様子の笠間久一郎という老人作家が宿に逗留します。その名前を宿帳でみた主人は、そこから二十五、六年前の因縁を思い出します。

当時、宇田青年は文学で身を立てることを志しながらも貧困に喘いでいました。自分の書いた小説は一度だけ名門「R」誌に掲載されたものの、以降は作品が続かない状態でした。そんな状況で、「R」誌の編集者だった江木が下宿を訪れてきます。宇田は作品を掲載してくれるのかと早合点しますが、江木は通俗小説を書いている売れっ子作家の笠間が多忙と体調不良で原稿を落としそうなので、その代筆(ゴーストライター)を頼みたいとのことでした。宇田は、江木から将来「R」誌に作品を掲載することを掛け合う、という曖昧な約束に引きずられて渋々OKします。

宇田は笠間の文体を研究し、さらにストーリーのテコ入れをすることで、笠間の代役を果たします。それどころか、宇田が書いた笠間の原稿は非常な評判を呼びます。笠間と江木は原稿を落とさずに安堵し、宇田は今までにない大金を得ます。味を占めた、笠間、江木、宇田の三人は次々と作品を発表し、通俗作家・笠間の名声は一段と高まります。そして笠間の念願であった全国紙での連続小説を獲得します。笠間の「影」となった宇田は本体以上の能力を発揮するのですが、本体であるはずの笠間は才能が枯渇してしまい、苦悩し酒と女に溺れます。ついに綻びが生じて代作であることが露見し、笠間は追放、小説は打ち切りとなりました。

その後の宇田は自身の創作に打ち込もうとしますが、笠間の「影」が自己と同一化してしまい、自身の作品を書くことができません。江木にも見放され、笠間と同様に切り捨てられてしまいます。宇田は職業を転々としながら温泉宿にたどり着き、現在の女房と所帯をもって宿屋の主人に落ち着きます。

そこから話は冒頭に戻り、宇田が笠間の身の上を案じながら作品が終わります。

この作品は小説のゴーストライターの話ですが、研究の分野でも似たようなものはあると思います。教授が有名人で研究室に沢山のスタッフと学生を抱えている、いわゆるビッグラボになると、中間管理職的なポジションの人が、多忙な教授に代わって色々原稿を書かされたり、研究プロジェクトを指揮したりするのは良くあることです(良いかどうかは別にして)。不思議なもので、そういう若頭的なポジションでは輝いていたのに、念願叶って独立した途端にくすんでしまう人は数多く見るように思います(個人の感想です)。こういう場合は、「影」が本体と同化して、才能が枯渇したのかと思ったりします。かと思うと、出自は曖昧ながら、独立した途端に突然変異的に才能を発揮したりする人もいます。傍らで見ていて、いつも不思議に思う所です。

松本清張自身、非常な苦労をされて年を経てから世に認められた作家ですので、こういう創作活動の奥深さを感じさせるような作品が書けるのかなと思いました。




2025年7月19日土曜日

仕事中は後ろ向きな言葉を検索する

毎日朝から晩まで忙しい研究室にいるのですが、午前中は残念ながらテンションが上がらない事が多々あり、兎角後ろ向きになります。そんな時は仕事の傍らで素直な気持ちをネットで検索して自らを慰めています。


検索ワード「助けて助けて助けて」

回答; 精神的にしんどいときの対処法&回復方法

* 無理をしないで休む

* 生活習慣の改善

* 質の良い睡眠をとる

* ストレッチなどの軽い運動を生活に取り入れる

* 芸術や自然に触れる

* とにかく楽する方法を考える

* 何も考えない時間を作る

* 他人と自分を比べない


検索ワード「何をやっても中途半端」

AIからのアドバイス:

”この状況から抜け出すためには、まず自分自身を知り、何に興味があり、何に情熱を注げるのかを理解することが大切です。そして、夢中になれることを見つけ、小さな成功体験を積み重ねることで、自信をつけていくことが重要です。また、過去に諦めてしまったことの原因を分析し、それらを克服するための具体的な行動を計画することも有効です。

さらに、完璧主義を手放し、成長に目を向けることも大切です。結果だけでなく、過程での学びや成長を評価することで、モチベーションを維持しやすくなります。

最終的には、決断力と行動力を高めることが、中途半端な状態から脱却する鍵となります。小さなことからでも良いので、決断し、行動に移す習慣をつけることが大切です。”


2025年7月14日月曜日

ブルーインパルス!

今年もすっかり暑くなりました。連日、当たり前のように大阪では気温が35℃を越えています。こんな危険な気温の中で歩き回っていると意識がもうろうとします。そんな折、大阪大学吹田キャンパスの付近をウロウロしていると、何やら空に向かってスマホのカメラを構えている人たちが大勢いました。 そういえば12日と13日はブルーインパルスが千里の万博記念公園の辺りを飛ぶというニュースを見たを思い出して、私も混じってカメラを構えていると果たして下記の写真を撮ることができました。ほんの一瞬でしたが、迫力がありました。




2025年7月6日日曜日

【悲報】今年初めて、Gに遭遇

 筆者は築50年の古い公団住宅に住んでいます。一応、清潔には暮らしているつもりなのですが、毎年1~2回、Gに遭遇します。本日、夜に洗面所の体重計をどかした際に、下におわしました。こんなこともあろうかとゴキジェットとバスマジックリン(泡)のスプレーを近くに置いているので、それら2本を両手に構えて、まずゴキジェットで先制攻撃をして、バスマジックリン(泡タイプ)で止めをさしました。昆虫ですから神経毒だけではなく、界面活性剤で気門を塞ぐのが肝要と考えております。Gは泡の海でひっくり返ってバタバタしておりましたが、しばらくして動かなくなりました。格闘終了後は亡骸をティッシュでくるんでビニール袋へ。

いつも不意を突いて登場されるのでビックリします。今日も久しぶりに激しく動揺してしまいました。効果があるのかわかりませんが、また各種グッズを買ってきて部屋に設置しようと思います。既に毒餌系の置物は所狭しと置きまくっているので、Gが苦手だというミント系の匂いのする防虫剤を買ってみようと思います。


(追記)

どこから侵入したかを考察するに、帰宅時に私の体に付着して入ってきたように思います。職場から家への帰路の途中に草深い公園があるのですが、何かが飛来して体に触れたような感触を覚え、その後で部屋にてGに遭遇する、という経験が2回ほどありました。ネットで調べると、夜は活動が活発で、ヒトの汗に引き寄せられることがあるとありました。迷惑な話です。これがカブトムシかクワガタだったら大人気なんですけどね。