2024年12月2日月曜日

「ロウソクの科学」(ファラデー著、渡辺政隆訳、光文社古典新訳文庫)を読んで

出張で移動中に有名な「ロウソクの科学」を読みました。この本は、ノーベル医学生理学賞を受賞された大隈先生やノーベル化学賞を受賞された吉野先生などが幼少期に影響を受けたという、科学者には霊験あらたかな名著です。

著者のマイケル・ファラデー(1791~1867年)は19世紀にイギリスで活躍した科学者で、貧しい身の上から驚異的な努力で化学と物理学で数々の業績を成し遂げた人物です。特に、電磁気学におけるファラデーの法則が有名ですが、ベンゼンの発見や塩素をはじめとする諸元素の液化などの化学領域でも大きな業績があります。また聞きによる知識ですが、ファラデーは実験の技術が極めて高く、理論ベースと言うよりは実験ベースで発見を重ねた人物と聞いたことがあります。この本は、そんなファラデーが、1860年にロイヤルインスティテューションでクリスマス休暇に少年少女向けに行った6回にわたる講演を書籍化したものです。内容は、ロウソクの構造から様々な物質の燃焼反応、水の生成と性質、気体(水素、酸素、窒素、二酸化炭素)の性質、大気の性質、呼吸と燃焼の関係など多岐に渡ります。驚くべきは、その大半を実験をしながら実演して見せた所で、単なる知識の習得にはとどまらない素晴らしい講義だと思います。

1860年というと電磁気学ではマックスウェル、熱力学ではジュールなどがバリバリ現役のときですね。この中で「ロウソクの科学」は、ロウソクという身近な素材を出発点にして、当時の最先端の科学まで平易に解説した講義と言えます。確かに幼少期に出会えていれば今よりマシだったかも。