2024年8月28日水曜日

三代目・古今亭志ん朝の「お見立て」を聞きながら

 「お見立て」は「五人廻し」と同じく喜瀬川花魁が活躍する演目です。登場人物も3人だけのシンプルな噺で、聞きやすくて笑えます。単純かつ一本気の杢兵衛と我儘いっぱいの喜瀬川。そして間に挟まれて苦労しつつも、どこか飄々とした喜助の絡みがとても面白いです。


あらすじ:

遊びの本場は吉原で、他とは全然違うそうです。妓楼には大見世(おおみせ)、中見世(ちゅうみせ)、小見世(こみせ)と三種類があるのだが、最も面白いのは中見世だそうです。通りに面した座敷は張見世(はりみせ)とよばれる格子張りになっており、外から中から見えるようになっている。そこには遊女たちが居並んで座っており、男たちは格子越しに遊女を見て相手を決めて店に上がる。店に入ると若い衆から「どの子をお見立てになりますか」と聞かれるので、好みの遊女を指名する。

今回の登場人物は、「五人廻し」でも出てきた、喜瀬川(きせがわ)花魁となじみ客で田舎者の金持ち・杢兵衛(もくべえ)、そして店の若い衆の喜助の3人。杢兵衛は喜瀬川に惚れているが、喜瀬川は杢兵衛を適当にあしらいつつ口から出まかせの結婚の約束などをしている。

ある時、杢兵衛が店に来ると、喜瀬川が顔も見たくないから出たくないと駄々をこねる。喜助は、杢兵衛を店に上げるときに「花魁がお待ちかねですよ」と世辞を言ってしまった手前、少しでも顔を見せてほしいと頼むのだが、喜瀬川が絶対に嫌だと譲らない。挙句に、自分は病気で入院していて店にはいないと杢兵衛に伝えて帰ってもらうようにと命じる。喜助は渋々承諾し、杢兵衛に伝えるのだが、それならば見舞いに行きたいと引き下がらない。喜助は咄嗟に花魁が入院した時に客が見舞いに行くのは御法度だと出まかせを言って乗り切ろうとするのだが、それでは自分は喜瀬川の兄だという証明書を御内所に書いてもらうようにと頼んで来いと杢兵衛が喜助に詰め寄る。弱った喜助は喜瀬川に泣きつくと、今度は実は喜瀬川は既に死んでおり、もう会うことはできないと伝えろと無茶を言う。喜助は、最初花魁がお待ちかねですよと言い、二度目には入院していると言い、三度目には亡くなったと言うのは流石に無理だと返すが、結局は喜瀬川に押し切られてしまう。喜助は、ウソ泣きをして杢兵衛に喜瀬川が死んだことを伝えると、真に受けた杢兵衛が今度は墓参りに行きたいと言い出す。寺はどこだと杢兵衛が詰め寄るので、喜助がどこにしようか思案していると、山谷かと言われたのでついそうだと答えてしまう。山谷なら近いから案内しろと杢兵衛に言われ、大いに弱ってしまう。再度喜瀬川に相談すると、適当な墓を自分の墓だと偽って大量の線香の煙と大量の花でカモフラージュして、とっとと済ませてしまうように命じる。

喜助は杢兵衛を山谷の適当な寺に連れて行き、なるべく新しい墓をみつけて喜瀬川の墓だと偽り、線香と花でごまかそうとする。しかし杢兵衛にうっかり墓碑銘を読まれてしまい、違うことがばれてしまう。その後も適当な墓へ連れて行くのだが、もはや杢兵衛は疑り深くなり騙されてくれない。次々と違う墓に案内されて、業を煮やした杢兵衛が喜瀬川の本当の墓はどれだと問い詰めると喜助が返す。

「これだけ沢山の墓がありますので、よろしいのをお見立て願います。」