たが屋はシンプルな短い噺です。後半は派手なチャンバラが威勢よく展開し、一番盛り上がったところで綺麗に終わると思います。たが屋が啖呵を切るシーンがあるのですが、江戸弁で早口にまくしたてる場面がスーッとして気持ちが良いです。
あらすじ:
花火の掛け声には、玉屋(たまや)と鍵屋(かぎや)の二種類があるが、これはどちらも江戸時代に花火を作っていた店の屋号である。しかし玉屋の声は頻繁にかかるのに、鍵屋の声は中々かからない。玉屋は元々鍵屋にいたお職人が独立して出した店で、のちに失火を出してしまいお取り潰しになった。にもかかわらず玉屋の声ばかりかかるのは、呼びやすいからだろうか。川柳にも「橋の上、玉屋、玉屋の声ばかり。なぜに鍵屋と言わぬ情無し(錠無し)」というのがあり、これは昔からだったようである。
現在の隅田川の花火大会の下は、旧暦の五月二十八日に行われた両国の川開きの花火大会だった。川開きの日には花火を見ようと両国橋の上は大勢の人でごった返していた。そこへ桶の箍(たが)を作る職人、たが屋が仕事帰りに通りかかる。家に帰るためには両国橋を渡ると近いため、花火見物の客の間を強引に通り抜けようとする。時を同じくして、馬に乗ったお殿様がお供の侍を三人連れて向こうから渡ってくる。たが屋は人に押されたはずみでお殿様の前に転び出た。さらに転んだ弾みで道具箱の中の箍がはじけて、馬上のお殿様の笠を弾き飛ばしてしまう。周りの町人はその様子をみて笑い出し、お殿様はカンカンに怒り出す。たが屋は慌てて平謝りに謝るのだが、お殿様は手打ちにすると息巻いている。こうなるとたが屋も開き直り、切れるものなら切ってみろと啖呵を切る。それを聞いて、三人の侍は刀を抜いてたが屋に襲い掛かるのだが、喧嘩慣れしているたが屋は慌てない。一人目の侍から刀を奪って切り倒し、二人目はかがんで相手の腹をついて倒した。三人目の侍は突いてくる時に体をかわして切り倒した。残されたお殿様は馬を降りて、槍を抜いてゆっくりとたが屋に向かってくる。流石にこれまでの侍とは違うぞと周囲の町人がお殿様にモノを投げつけて、たが屋の助太刀をする。お殿様は狙いすまして槍でたが屋を突こうとするのだが、たが屋にかわされ、槍の先を切り落とされてしまう。慌てて刀を抜こうと手をかけた刹那、たが屋がお殿様の首を刀で切り落とす。お殿様の首が中天高く飛ぶ。見ていた見物人が声をそろえて言う。
「た~が屋~」