連休中に司馬遼太郎著「菜の花の沖」の第一巻を読みました。この本は、随分前に購入していたのですが、長いこと本棚に入れっぱなしでした。舞台が淡路島と大阪から近く、今が菜の花の季節ということで思い立ち読了しました。
この小説の時代背景は江戸後期で、主人公は高田屋嘉兵衛という商人です。嘉兵衛は、のちに蝦夷・千島の海で活躍する商人で、当時南下政策を進めていたロシアとも単身渡り合ったほどの人物です。
第1巻は、高田屋嘉兵衛が淡路島の都志村の貧しい家に生まれ、悲惨な幼少期を過ごし、やがて兵庫に出て樽廻船の船乗りになるまでが描かれています。本の半分くらいがムラ社会でいじめられる話で正直読んでいてつらかったです。
当時の若者は、各集落に若衆宿(宿)が組織されており、一定年齢の間、共同生活を送っていました。嘉兵衛のいた都志村には新在家と本村の二つの集落があり、互いに数百メートルしか離れていないのですが、別々の宿があり、互いに敵対する関係でした。嘉兵衛は新在家に働きに出ており、新在家の宿に入るべきだったのですが、生家のある本村の宿を選んだために爪弾きにあいます。さらにそこに網元の娘との色恋沙汰も絡み、いじめはどんどんとエスカレートして、ついには殺されそうになります。嘉兵衛は命からがら村を抜けるのですが、ムラ社会の残酷さというか、今につながる同調圧力の恐ろしさが生々しく描かれていて暗い気持ちになりました。
ただ、後半の船乗りの下りは少しずつ明るいトーンになり、幾分ホッとしました。休みは終わってしまいましたが、二巻を買ってきたので少しずつ読み進めようと思います。