2025年1月13日月曜日

「同志少女よ、敵を撃て」(逢坂冬馬著、ハヤカワ文庫)を読んで

この本は冬休みに読もうと思っていたのですが、休みの間には読み切れず、この連休で読み終えました。いや~、面白かったです。

この小説は、第二次世界大戦下の独ソ戦の真っ最中におけるモスクワ近郊の農村から始まります。そこで猟師の母と、村の皆と素朴で暖かい生活を送っていた、主人公のセラフィマが、侵攻してきたナチスドイツ軍に村を蹂躙され、母も殺される、という刺激的な場面から物語が始まります。その後、セラフィマは復讐を胸に狙撃兵としての教育を受け、女性だけの狙撃部隊に組み込まれて、戦地に送られます。一番の見どころは、独ソ戦のクライマックスといえるスターリングラード包囲戦でしょうか。そこでの戦友との出会いと別れ、仇敵との再会、周辺住民との複雑な人間関係など濃密なドラマが展開され、完全に引き込まれました。その後は中々最後の展開が読めずハラハラしましたが、あの終わり方で良かったです。(もっと悲惨なものを想像してしまいました。)

時節柄、作者の方は現在の社会情勢に複雑な思いをされているとありましたが、戦争のリアルが伝わってきて胸を打つものがありました。世界史に疎かったので、当時の独ソ戦をネット検索してみましたが、あまりの悲惨さに愕然とする思いでした。平和のありがたみが身に染みます。