私は小さい頃から将来は学者さんになりたいと憧れていました。その後、苦労はしましたが、どうにかこうにかアカデミアの末席を汚して現在に至っております。しかし自由を重んじる学風で知られる京都大学の学生時代に、自由と無責任を履き違えた無為徒食の生活というか、禁断のモラトリアムの味を知ってしまい、それ以降、怠惰の虫が宿痾のように心を蝕んでおります。最近も毎日どうにか何も仕事をしないで生活できないかと妄想してしまいます。
そんなわけで最近ネットで、FIREの記事を良く見ます。FIREは 、Financial Independence, Retired Earlyの頭文字をとった造語で、早期に資産形成して、その後は利子・配当収入などの不労所得で生活をしていく、早期退職の一形態です。アメリカで最初に言われて、現在では日本でも良く聞く言葉かと思います。
確か、最初の設定では、一年間分の支出の25倍(25年分)の資産を何とかして形成し、それを4%の運用益が出るように資産投資をすれば、元本が減ること無しに永久に生活可能と言う事だったと思います。4%の根拠となったのは、ある年のアメリカの平均株価上昇率が7%で物価上昇率が3%だったので、差分の4%が運用益として見込まれるだろうとのことでした。
実際にこんなことが出来れば素晴らしいのですが、現実に当てはめてみると、やっぱり無理ゲーですね。そもそも支出の25年分の資産形成にかなりの難があり、さらに全体として4%もの高利回りの運用も何をしたら良いのか全くわかりません。結構、危なめのリスク資産に手を出さないといけないと思うのですが、そもそも元本が崩れるとコンセプトの根幹が崩壊する気がします。
完全なリタイアメントは無理でも、生活の足しになればと、参考のために出回っている記事を見るのですが、ちょっと考えると現実ではないと言うのが多いですね。先日見た記事では、1500万円の資金を配当利回り4%の高配当銘柄の株式に投資して、年間配当金の60万円(月平均5万円)で生活しているとありました。確かに4%くらいの配当利回りになる株は日本株でもそこそこあるので、一応可能かと思いました。ただ、一つの銘柄に何百万円も突っ込むのはリスク高いし、減配になったらプランが崩壊するので自分だったら尻込みしてしまいます。
一方の支出の方ですが、家賃が月3万円のアパートに住んで、それ以外の支出を月2万円に抑えていると記事にありましたが、どうなんでしょう。確かに私も貧乏学生だったときは、京都で月額2万7千円(家賃2万3千円+共益費4千円、風呂・トイレ共用)の格安アパートに住んでいたので、そんな物件は今もどこかにあると思いますが、問題はそれ以外の支出を月額2万円以内に抑えられるかどうかですね。例えば、固定費を電気代3000円+通信費3000円+ガス代2000円+水道代2000円と見積もると、それだけで1万円かかっているので残りが1万円ですね。それを30日で日割りにすると330円です。これで一日三食とって、パンツが破れたら新しいの買って、風邪をひいたら風邪薬買って…いけますかね?そもそも日々の掃除や洗濯、トイレで尻を拭くことにすら金はかかりますしね。FIREの怖いところは、一度元金を崩すと、それに伴って得られる利子も減るので加速度的に手元の資金が減っていくことかと予想されます。
そこで、リアルな路線で考えてみます。単身者の1ヶ月当たりの支出をネットで検索すると、下記の文章が出てきました。
”総務省の「家計調査 家計収支編 単身世帯(2023年)」によると、1人暮らし世帯の1カ月あたりの生活費平均は、167,620円でした。”
これに、国民年金や社会保険、医療保険など諸々を追加で勘案すると月に20万円くらいあれば安心ということになります。そうすると年間240万円を4%の配当で捻出しなければならず、リスク資産への投資額は6000万円(6,000*0.04=240)必要になってしまいます。
さらに、2人以上の勤労世帯になると、1ヶ月当たりの平均支出は約31.9万円なのだそうです。余裕を見て35万円とすると、年間420万円必要で、リスク資産への投資に必要な額は1億500万円です。ほら、すっかり現実味が薄れるでしょう?
まあ、コタツ記事の愚痴を言って、こんなところに書いても仕方ないですね。
あまり関係ないのですが、先日YouTubeで聞いたナイツさんのラジオで、ゲストのママタルトさんがされていた魔法学校のショートコントが心に刺さりました。
「今週は、口座に入っている金額を自由に変えられる魔法を学んで、来週は相手を〇ッチな気分にさせる魔法を学ぶんだ」「じゃあオレもう来週出ていくって!最初にそんな良い魔法を教えたらダメでしょ」
メッチャ面白かった!やっぱり芸人さんは潜在的なニーズをうまく汲みますね。それはさておき、次の給料日を目指して地に足をつけて働こうと思います。