冬休みの読書ということで、早川文庫から出ている、アガサクリスティー著、山本やよい訳の「五匹の子豚」を読みました。推理小説なので粗筋を書くのも野暮なのですが、この物語では、探偵のエルキュール・ポアロが16年前にある高名な画家が妻に毒殺されたとされる事件を、画家の娘から再捜査の依頼を受け、当時の関係者から証言を得て事件に潜む真実を暴き出す、というものです。表題はマザーグースの童謡から取られたそうで、実際の詩はWilkipediaによると下記のようなものだそうです。物語では、五匹の子豚が、画家とその妻に所縁の深い五名の関係者(幼馴染の兄弟、妻の妹、妻の妹の家庭教師、画家の浮気相手)をそれぞれ例えるのに使われています。
《This Little Piggy》
This little piggy went to market,
This little piggy stayed home,
This little piggy had roast beef,
This little piggy had none,
This little piggy cried "Wee! Wee! Wee!" all the way home.
物語の始まりの時点で事件は既に判決を受け、妻は刑に服している最中に亡くなってしまったことから、実質的には終わった事件です。しかしポアロは当時の裁判に関わった司法関係者として、弁護士、検事、捜査をした警察、画家の顧問弁護士に面会し、事件や裁判のいきさつを聞いた後、五名の関係者に一人ずつ面会し、当時の状況を聞き、手記を書いてほしいと依頼します。その後、それぞれから送られてきた手記が作中で語られ、最後に五名の関係者全員が依頼者と共に集められ、ポアロの推理が披露されます。事件のあらまし、詳細が順序良く、階層的に述べられることでポアロの推理の構築する過程が読者にも自然に受け入れられる構成になっています。(かと言って犯人はわかりませんでしたが。)展開に無駄も無理もなく、一読すると見過ごしてしまいそうな台詞に実は重要な意味が含まれてるという仕掛けが諸所に仕組まれていて、流石だと感心しました。
社会人としての自己研鑽には繋がらないかもしれませんが、エンターテインメントとして充分楽しめました。