2024年10月29日火曜日

第42回全日本大学女子駅伝を観戦して

駅伝愛好家として、10月27日に仙台市で行われた全日本大学女子駅伝をテレビ観戦しました。この駅伝は、6区間、合計38キロメートルを、シード校8校と各地区の予選を勝ち上がってきた17チーム+オープン参加の東北学連選抜の合計26チームが争う、大学日本一を決める大会です。戦前の注目は何といっても7連覇中の名城大学が8連覇を達成するのか、それとも立命館大学や大東文化大学、日本体育大学などが王座を奪取するのかでした。

結果は、強豪・立命館大学が2015年以来、9年ぶりに王座奪還を果たしました。全6区間のうち、区間賞が3区間(2区・山本選手、3区・村松選手、6区・土屋選手)を占め、そのうち2区と3区は区間新記録という、まさに圧勝でした。2位は大東文化大学で、こちらも区間賞が3区間(1区・野田選手、4区・蔦野選手、5区・ワンジル選手)を占めたのですが、あと一歩およびませんでした。大東文化大学はこれまでも2位が多かったのですが、今回も悲願の初優勝には届きませんでした。城西大学は1~3年生で臨んだ編成で全員区間1桁順位で好走しており、来年へ期待が持てる3位でした。驚いたのが7連覇中だった名城大学で、区間賞はなく、アンカーの谷本選手が流石の追い上げを見せたのですが残念ながら4位という結果でした。一年ごとに選手の顔ぶれが大きく変わる大学スポーツで勝ち続ける難しさを見た気がします。

駅伝は一人の遅れが、全体の遅れに直結するので、ケガなどで上手くピーキング出来ないと精神的に大変だろうと思いました。戦前の前評判が高かった選手やチームが今回の大会で必ずしも実力を発揮できたわけではないと思いますが、気持ちを切り替えて次の大会へ向けて頑張ってほしいと部外者の駅伝好きオジサンは切に思います。


総合成績メモ

1位:立命館大学 2時間03分03秒(大会新)

2位:大東文化大学 2時間04分06秒(大会新)

3位:城西大学 2時間05分41秒

4位:名城大学 2時間06分02秒

5位:東北福祉大学 2時間06分23秒

6位:大阪学院大学 2時間06分43秒

7位:拓殖大学 2時間06分48秒

8位:筑波大学 2時間08分10秒

(以上、来年のシード権獲得)

9位:日本体育大学 2時間08分22秒


区間賞メモ

1区(6.6キロ):野田真理耶(大東文化大学2年)21分11秒(区間新記録)

2区(4.0キロ):山本釉未(立命館大学1年)12分41秒(区間新記録)

3区(5.8キロ):村松灯(立命館大学4年)18分45秒(区間新記録)

4区(4.8キロ):蔦野萌々香(大東文化大学2年)15分42秒

5区(9.2キロ):サラ ワンジル(大東文化大学2年)28分51秒

6区(7.6キロ):土屋舞琴(立命館大学4年)24分58秒

2024年10月26日土曜日

「アイディアのつくり方」(ジェームス・W・ヤング著、今井茂雄訳、阪急コミュニケーションズ)を読んで

著者のジェームス・W・ヤングは広告業界で長い間顕著な業績を上げた方で、自分の方法論を簡潔にまとめた読み物です。コピーライターとして、新しいネタを考える過程を下記の5段階に分けて、それぞれをわかりやすく解説しています。


1.資料を集める

  一般的資料、日常的にやること、スクラップブックの作成が便利

  特殊資料、特定のテーマについてやること、カード索引法が便利

2.資料を咀嚼する

  部分的なアイディアを書き留める

3.資料を組み合わせる。(無意識の作業)

4.アイディアの誕生

5.生まれたアイディアを批判、検討する


私が心に響いた箇所は、第1段階の特殊資料を集める際の下記の記述です。(下線は私が特に重要と思った場所です)

『製品とその消費者についての身近な知識を手に入れることについてこれまで何度も言い古されてきた話の真意とはこのことである。私たちは大抵この知識を収得する過程であまりに早く中止してしまう。表面的な相違がほとんど目立たないような場合、そこには何ら相違点がないとすぐにきめてしまう。しかし、十分深く、あるいは遠くまで掘り下げていけばほとんどあらゆる場合、すべての製品とある種の消費者との間に、アイデアを生むかもしれない関係の特殊性が見つかるものなのだ。』この文章の後に、一見すると何の変哲もない石鹸について、分厚い本が書けるくらい深く追求した結果、5年間広告に使えるだけのコピーのアイディアを出すことができたとありました。

私は研究の申請書作成がやや苦手で、研究の魅力を上手く伝えることに苦労しております。特に、類似の研究が既に数多くなされているなかで、自分の研究の差別化という所が本当に苦手です。そういうところに上記の記述が応用できないかと思いました。

ちなみに、この本の解説は竹内均先生。竹内先生は地学を専門とする東大名誉教授にして科学雑誌Newtonの初代編集長で、昭和の科学少年にはお馴染みの人物です。本文と同じくらいの長さで自分の仕事術を紹介してくれています。竹内先生は東大を退官してから亡くなるまでの二十年間に300冊近くの書籍を出されています。その仕事術は、本文の方法と酷似していたということで、仕事の種類は違えども仕事の仕方は共通しているという話でした。



2024年10月21日月曜日

今年のプリンセス駅伝を観戦して

箱根駅伝の予選会の次の日は、第10回全日本実業団対抗女子駅伝予選会(通称:プリンセス駅伝)をテレビ観戦しました。この駅伝は女子実業団の対抗戦で、11月に行われる全日本実業団女子駅伝(通称:クイーンズ駅伝)の予選会を兼ねて、全6区間、合計42.195kmで行われるレースです。このレースの上位16チームと昨年のクイーンズ駅伝の上位8チームが、今年のクイーンズ駅伝に参加できます。我が故郷からは日立がいつもエントリーしており、陰ながら応援しております。

この日も、昨日の箱根駅伝の予選会と同様に気温が高く、レース直前で気温20℃、湿度62%、風速7m/sと駅伝には過酷なコンディションでした。レースの序盤は順位が目まぐるしく変わる展開でしたが、インターナショナル区間でユニクロがトップに立つと、その順位を最後まで守り切りトップでゴールしました。2位は最終区間で樺沢和佳奈選手が驚異の追い上げを見せた三井住友海上でした。我らが日立は1区で20位と予選圏外からのスタートでしたが、徐々に追い上げて最終8位でフィニッシュし、クイーンズ駅伝への出場権を獲得しました。特に、5区の鈴木千晴選手と6区の花野桃子選手が、共に区間3位と素晴らしい走りを見せてくれて、次のクイーンズ駅伝も期待させてくれる内容でした。

昨日の箱根駅伝の予選会と同様にフラフラになってしまう選手も散見され、暑さはレースの天敵だと実感しました。来週の全日本大学女子駅伝はどうなるのでしょうか。


結果の抜粋(総合順位)

1位:ユニクロ 2時間19分16秒

2位:三井住友海上 2時間19分23秒

3位:エディオン 2時間19分52秒

4位:シスメックス 2時間19分54秒

5位:豊田自動織機 2時間20分16秒

6位:大塚製薬 2時間20分31秒

7位:しまむら 2時間20分37秒

8位:日立 2時間20分44秒

9位:肥後銀行 2時間21分08秒

10位:京セラ 2時間21分20秒

11位:東京メトロ 2時間21分57秒

12位:ニトリ 2時間22分00秒

13位:ルートインホテルズ 2時間22分02秒

14位:ベアーズ 2時間22分09秒

15位:スターツ 2時間22分17秒

16位:デンソー 2時間22分29秒

(ここまでがクイーンズ駅伝の出場権を獲得)

17位:ダイソー 2時間23分05秒


区間賞

1区 (7.0km) 伊澤菜々花(スターツ)  22分33秒

2区 (3.6km) 後藤夢(ユニクロ)    11分13秒

3区 (10.7km) 矢田みくに(エディオン) 34分15秒

4区 (3.8km) アグネス・ムカリ(京セラ)11分19秒(区間タイ記録)

5区 (10.4km) 棚池穂乃香(大塚製薬)  35分21秒

6区 (6.695km) 樺沢和佳奈(三井住友海上)21分29秒


2024年10月20日日曜日

第101回箱根駅伝予選会をみて

今年も箱根駅伝の予選会をテレビですが観戦しました。今年は午前9時の時点で気温が23.2℃もあり、かなり気象条件が悪く、選手の方々は大変だったのではないかと思いました。そのせいかスローペースで流れたにもかかわらず、皆さん大量の汗をかいており、本調子ではないようにみえました。全体トップは日本大学のキップケメイ選手で、記録は60分59秒、日本人選手のトップは中央学院大学の吉田礼志選手で記録は63分29秒でした。吉田選手は昨年も留学生に果敢に挑み、日本人選手では東農大の前田選手に次ぐ2位でしたが、今年は日本人選手トップ、全体でも10位でゴールしました。大学としてのトップ通過は立教大学でした。チーム内の10番目のタイムの選手でも全体137位(66分25秒)と非常に安定しているようにみえました。上野監督の跡を継いだ高林監督の指導が実を結んだのかなと素人ながらに思います。残念だったのは11位で本選出場を逃した東京農業大学で、10位の順天堂大学との差はわずか1秒で、1人あたり0.1秒と僅差でした。この辺りは各大学間の実力が非常に均衡していると感じます。今回は明治大学や国士舘大学、東海大学などの常連校も本選出場を逃しました。特に、東海大学は体調を崩してゴールできなかった学生さんもいて、つらいだろうと思います。箱根駅伝に挑むような長距離陸上選手は、今や月間1000キロにも及ぶ走り込みをしてギリギリの調整をしているので、気象条件や体調、メンタルなど、ちょっと歯車が狂うとああいう感じになってしまうのかと思います。ともあれ、これで正月の本選に出場するメンバーが決まったので、本選を楽しみに待ちたいと思います。

結果の抜粋

1位:立教大学 10時間52分36秒

2位:専修大学 10時間53分39秒

3位:山梨学院大学 10時間54分6秒

4位:日本体育大学 10時間55分58秒

5位:中央学院大学 10時間56分1秒

6位:中央大学 10時間56分3秒

7位:日本大学 10時間56分53秒

8位:東京国際大学 10時間58分53秒

9位:神奈川大学 10時間59分12秒

10位:順天堂大学 11時間1分25秒

(ここまで本選出場)

11位:東京農業大学 11時間1分26秒

12位:明治大学 11時間2分24秒

13位:国士舘大学 11時間2分40秒

14位:東海大学 11時間3分39秒

15位:流通経済大学 11時間5分11秒

16位:駿河台大学 11時間9分10秒

17位:麗澤大学 11時間12分5秒

18位:筑波大学 11時間12分17秒

2024年10月16日水曜日

第101回箱根駅伝予選会に向けて、去年の復習と勝手な展望

今週の土曜日、19日に箱根駅伝の予選会(正式名称:第101回東京箱根間往復大学駅伝競走予選会)が東京の立川駐屯地で行われます。参加する大学は、各校10~14名でチームを作り、ハーフマラソン(21.0975km)を走って、上位10名の合計タイムで競います。今回は、タイムの上位10校が来年正月の箱根駅伝の本選に出場できます。

ちなみに第100回箱根駅伝の本選の結果は下記の通りでした。

シード校

1位:青山学院大学、2位:駒澤大学、3位:城西大学

4位:東洋大学、5位:國學院大學、6位:法政大学

7位:早稲田大学、8位:創価大学、9位:帝京大学

10位:大東文化大学

シード外

11位:東海大学、12位:国士舘大学、13位:中央大学

14位:立教大学、15位:日本大学、16位:日本体育大学

17位:順天堂大学、18位:駿河台大学、19位:中央学院大学

20位:明治大学、21位:神奈川大学、22位:東京農業大学

23位:山梨学院大学


第100回大会は記念大会だったので枠が広がり23チームが参加したのですが、次の第101回大会は通常通り20チーム+学連選抜になるため、前回本選に出たチームから少なくとも3チームは予選敗退になってしまいます。しかも前回優勝候補に挙げられながら、集団インフルでよもやの13位に沈んでしまった中央大学や、戦前は本選でも上位が予想されていた明治大学などの強豪校が予選会から参加するので、かなりレベルが高くなるのではと期待されます。こうした本選参加組に対して、私の地元の筑波大学や初出場を目指す麗澤大学などがどんな走りをするのかにも注目しています。個人的には、5月の日本選手権男子1万メートルで強烈なインパクトを残した東農大の前田和摩選手がエントリーされていないとニュースで見たので心配しております。例年の予選会は、上位グループが桁違いのスピードを持つ留学生選手で固まってしまうのですが、昨年は前田選手らが果敢に彼らに挑戦していて感動しました。今年もそんなチャレンジする日本人選手たちの姿が見たいです。

とはいえ、関西では地上波の放送は無し。最速で夜7時~9時のBS日テレか、少し待って翌20日の午後2時から日テレジータスの放送を待つしかありません。関東では日本テレビが放送してくれるのだから、関西も系列局である読売テレビで放送してほしかったです。土曜日はどうせ出勤なので、仕事中はなるべくネットに触れないようにしようと思います。

2024年10月14日月曜日

第36回・出雲駅伝が面白かった

今年の大学駅伝シーズンの開幕戦、出雲駅伝が本日行われました。結果は、國學院大學の優勝でしたが、今年のレースも見どころ満載でした。

まず優勝候補筆頭とネットニュースで挙げられていた青山学院大学は惜しくも3位でした。1区の鶴川正也選手が区間賞の走りでしたが、レース序盤が集団走になってしまい、有力校が互いに牽制した展開になったのが、個人的には勿体ないと思いました。もっと誰かが飛び出すような展開になっていれば、各校のふるい落としが早めに始まって、以降の2区、3区で大きく引き離す展開になったかもしれません。今回は青山学院大学、駒澤大学、國學院大學、創価大学などが終盤まで僅差で行ったために、青山学院大学が得意とする単独走に持ち込めなかったのが残念でした。

続いて、昨年の出雲駅伝と全日本駅伝を制した駒澤大学が2位でした。篠原倖太朗選手と並ぶチームの大黒柱であった佐藤圭汰選手がアメリカのボルダーで行われた合宿でケガをしてしまったとのことでエントリーされず、個人的にはもっと苦しい展開になるかと思っていました。しかし、流石の層の厚さが発揮されての2位でした。アンカーの篠原選手は残念ながら平林選手に競り負けてしまいましたが、青山学院大学の太田選手と同タイムでの区間3位は立派だと思いました。駒澤大学が得意とする全日本駅伝には佐藤選手もエントリーされているので、次戦は期待できるのではないかと思います。

優勝した國學院大學は、4区の野中恒亨選手、5区の上原琉翔選手、6区の平林清澄選手の後半3区間で連続区間賞を出す圧巻の走りでした。特に平林選手は、アンカー対決で自分よりスピードのある篠原選手と一騎打ちになったときに、冷静に勝機を逃さずに勝ち切ったのが素晴らしかったです。今年の大阪マラソンの時も、実業団選手を相手に果敢に勝負を仕掛けて優勝し、初マラソン日本記録および学生最高記録を樹立しただけあって、勝負勘に優れていると思いました。

上位三校は全員が区間6位以内でまとめられており、実力の拮抗した良いレースでした。以上、駅伝鑑賞歴40年のオジサンの勝手な感想でした。次は19日の箱根駅伝予選会ですね。どんな戦いになるのか楽しみです。


上位3校の結果(選手名は敬称略です)

1位:國學院大學 2時間9分24秒

  青木(区間3位)、山本(区間5位)、辻原(区間4位)、野中(区間1位)、上原(区間1位)、平林(区間1位)

2位:駒澤大学 2時間10分4秒

  桑田(区間6位)、帰山(区間4位)、山川(区間2位)、伊藤(区間3位)、島子(区間2位)、篠原(区間3位)

3位:青山学院大学 2時間10分24秒

  鶴川(区間1位)、野村(区間6位)、黒田(区間3位)、宇田川(区間5位)、若林(区間5位)、太田(区間3位)


2024年秋期のアニメ(ブルーロック、チ。地球の運動について)をみて

10月期も魅力的なアニメが続々とはじまりました。私は、「ブルーロック VS. U-20 Japan」と「チ。ー地球の運動についてー」を見ています。特にブルーロックは待ちに待った第2期ということで期待しております。やはり青春スポーツものは構図がわかりやすくて良いですね。見ていると、仕事でコチコチに凝り固まったアタマが気持ちよくほぐれていく気がします。個人的には、主人公の潔与一くんが強すぎないのが好きです。彼の武器が空間認識能力とオフザボール、ダイレクトボレーシュートという、他者の貢献なくしては成立しないのも良いです。直近の第2話の最後に覚醒を予感させてくれているので次回が楽しみです。

「チ。ー地球の運動についてー」については、これまで本屋さんに単行本が並んでいるのは何度も見ていたのですが、内容は全然知りませんでした。今回、NHKで放送されているのを見て、第1話から引き込まれました。さらに直近の第3話が、あんな展開になるとは驚きました。こちらも早く次の話が見たいです。




2024年10月13日日曜日

キングオブコント2024が面白かった

昨日は年に一度のお楽しみ、キングオブコントをテレビで見ました。今年も面白かったです。私はシュールなネタが好きなので、富安四発太鼓とか頭を丸坊主にした熱狂的ジュビロ磐田サポーターの女性とかの設定がツボでした。M-1、The Second、R-1などなど賞レースはついつい見てしまいます。今や沢山の芸人の方が賞レースにストイックに向き合っていて、昭和の破天荒を売りにしていた時代をテレビで見ていたものとして感心します。キングオブコントも、参加されている全ての芸人さんから強い意気込みがひしひしと伝わってきて、アスリートのような雰囲気を感じます。どの世界も生き残るのは大変ですね。個人的には、どこかに何もしないでも暮らしていける、安住の地があると良いのですが…。残念ながらそんな場所は無いのですね。


結果

1.ラブレターズ:475+472=947点

2.ロングコートダディ:475+471=946点

3.ファイヤーサンダー:476+469=945点

4.や団:474点

5.シティホテル3号室:471点

6.ダンビラムーチョ:469点

7.ニッポンの社長:468点

7.cacao:468点

9.コットン:461点

10.隣人:458点

2024年10月10日木曜日

今年のノーベル化学賞について思ったこと

今年(2024年)のノーベル化学賞には、蛋白質工学の大家であるワシントン大学のDavid Baker教授、AIを用いた蛋白質の立体構造予測ソフトウェアAlphaFoldの開発者であるDeepMind社のDemis Hassabis氏、John Jumper氏の三氏が選ばれました。

David Baker教授は小生と年齢がそれほど変わらないのですが、私が学位を取って何とかポスドク研究員になった時には、既に教授としてNature誌やScience誌に続々と論文を発表されていました。特にDe novoにおける人工的な蛋白質デザインのセンスが素晴らしく、最近では天然には存在しない人工の機能性蛋白質を一から創出されています。この手の蛋白質工学的な仕事をする人は昔から沢山いるのですが、(自省的な意味を込めて言いますが)ともすると自己満足に陥りがちで、他の分野の生物学者を満足させる研究にはなりにくい印象があります。しかしDavid Baker教授の仕事は洗練されていて生物学的意義も大きく、いつも感心させられます。

また蛋白質の立体構造予測のソフトウェアであるAlphaFoldですが、このソフトウェアが出る前後では構造生物学分野の状況が一変したと言っても過言ではない、本当に革命的なソフトウェアです。小生は実験を生業にしている構造生物学者ですが、AlphaFold以前の立体構造予測と言ったら、難しい理屈を並べた割には実に頼りないもので、その精度は信頼できるものではありませんでした。それ故に、無いよりまし”Better than Nothing”的な扱いだったと思います。それが、2020年にAlphaFold2が発表されるや否やその精度の高い予測で一大センセーションを巻き起こしました。現在もどんどん改良が続いており、新しい地平を切り拓いた偉業であることは間違いないと思います。驚くべきは、Demis Hassabis氏は2016年に囲碁の世界チャンピオンを破ったソフトウェア、AlphaGoの開発者でもあることです。当時、チェスよりも遥かに複雑なプロセスを必要とする囲碁は強力なソフトウェアを開発するのが難しいとされていましたが、AlphaGoによってその固定観念が打ち破られました。凄い人は色々な方面で世界を動かすのだと感心します。


余談ですが、私はくじらやで夕食を食べた後は阪大吹田キャンパス内を散歩するのが日課なのですが、昨日は大阪大学の本部裏の駐車場にテレビの中継車と思しき車が止まっているのを見かけました。こうした光景は、過去に在籍した理化学研究所でも東京大学でもこの季節になると見られました。もし受賞者がいれば、即座に取材しないといけないですし、それ以外の場合でも受賞内容について解説のための映像を取らないといけないですから、マスコミの方も、それに対応する広報の方も忙しいのだと推測されます。以前、受賞の候補に挙がった先生からお聞きしたのですが、ノーベル賞の発表はかなり直前なのだそうです。それ故に、受賞が有力視されている先生が在籍されている研究機関では、いざという時に備えて事務担当者は毎年スタンバイしていると聞きました。受賞した人、逃した人、周囲の人、それぞれこの季節には色々なドラマがあるのだと思いました。

2024年10月9日水曜日

「チーズはどこへ消えた?」VS「バターはどこへ溶けた?」

チーズはどこへ消えた?(スペンサージョンソン著、門田美鈴訳、扶桑社)

バターはどこへ溶けた?(ディーンリップルウッド著、道出版)

どちらも昔ブックオフの100円コーナーで買った本ですが、久しぶりに読み返してみました。といっても、どちらも100頁も無いので、30分もあれば読み終えました。2冊の本は、共に簡単な寓話を通して人生訓を伝えようとしているのですが、メッセージは対極にあります。
「チーズ~」では、2匹のネズミと2人の小人が登場します。彼らは毎日迷路の中を好物のチーズを探して彷徨っているのですが、ある時に一緒に大量のチーズを見つけます。チーズはネズミにとっては、ただの食料ですが、小人としては自己実現の証でした。小人たちは自分たちの人生が達成されたと思い、迷路の探索を止めて、チーズの傍に安住します。しかし徐々にチーズは減っていき、ついになくなってしまいました。ネズミたちはチーズが無くなると、次のチーズを求めて再び迷路に繰り出しますが、小人たちは大きなショックを受けてしまいます。すっかり落ち着いてしまった彼らは変化を恐れて立ちすくむのです。しかし、やがて自らの足で再び迷路に繰り出して…というのがあらすじです。要するに状況は時々刻々と変わるので、自分たちも進んで変わらないといけませんね、とのことだと思います。
一方、「バター~」では、2匹の狐と2匹の猫が登場します。彼らはそれぞれ森の中で好物のバターを探しています。ある時、狐と猫が一緒に森のペンションで大量のバターをみつけます。バターを見つけて以降、狡猾な狐とは対照的に、猫はものぐさでペンションに住み着いて、日がな一日ゴロゴロしだします。そのうちバターがなくなると、2匹の狐は直ぐに行動を開始して、森へ探索に向かいます。猫のうちの1匹は最初はペンションでゴロゴロしているのですが、徐々に不安になり狐を見習って森へと繰り出します。しかし残る1匹の猫はいつまで経っても泰然自若として動きません。やがて狐たちは新しいバターを見つけるのですが、森へ飛び出した猫は狐に騙されてバターを見つけられません。その猫は這う這うの体でペンションまで戻ると、残った猫は相変わらず伸びたり縮んだりしています。しかし何と人間に飼われたことでバターにありついていました。そのうち狐たちは人間の狩人によって…というのがあらすじです。ありふれた幸せを大事にして、時の流れに身をまかせる、という事なのかと思いました。
何度も転職している下っ端研究者としては、転職のたびに仕事の内容も生活も強制的に変わらざるを得ないので、チーズ型の人生を歩んでいるような気がします(ポジティブに望んではいないけど)。ただ、バター型の肩ひじを張らずにあるがままの人生を生きてきたら今頃どうなっていたのかと遠い目で空想するようなこともあります。しかし残念ながら現実感が無いように感じました。う~ん、難しい。200円で少し人生を考えました。





「風が強く吹いている」(三浦しをん著、新潮文庫)を読んで

やっと暑さが一段落し、今年も駅伝シーズンが到来しました。私のような長距離陸上好きにはワクワクする毎日の始まりです。

今年の大学3大駅伝では、どこが優勝するのでしょうか。前評判通り青山学院大学が有利なのでしょうか。それとも駒澤大学でしょうか。或いは今年の大阪マラソン優勝の平林選手擁する國學院大學でしょうか。他の有力校、有力選手はどんな記録を出すのでしょうか。

まずは10月14日に出雲駅伝があります。距離の短い出雲駅伝では、ちょっとしたプランの狂いで思わぬ展開になったりするので最初から最後まで目が離せません。それが終わると10月19日に第101回箱根駅伝の予選会があり、11月4日に全日本大学駅伝があります。

また、女子に向けると、全日本大学女子駅伝や富士山女子駅伝で今年こそ名城大学の牙城を崩す大学は現れるのでしょうか。それとも名城大学が全日本7連覇、富士山女子駅伝7連覇という、とんでもない大記録を達成するのでしょうか。全日本大学女子駅伝が10月27日、富士山女子駅伝が12月30日です。

それ以外にも10月20日の女子実業団のプリンセス駅伝、11月24日のクイーンズ駅伝、12月1日の福岡国際マラソン、12月22日の全国高校駅伝などほぼ毎週何かしらのレースがあるのでこれから楽しみです。


前置きが長くなってしまいましたが、先日「風が強く吹いている(三浦しをん著、新潮文庫)」を読了しました。この物語の主人公である蔵橋走(くらはし・かける)は、高校時代は陸上界で注目されたランナーでしたが、周囲と馴染めず陸上を諦めて東京の寛政大学に進学します。一方、清瀬灰二(きよせ・はいじ)はかつて名ランナーでしたが、足のケガを抱え寛政大学の竹青荘(ちくせいそう)という、ボロボロの学生寮に住み、雌伏の時を過ごしています。走はふとしたきっかけで清瀬と出会い、誘われるままに竹青荘に住むこととなります。竹青荘には、寛政大学の個性的な若者達が住んでおり、走が来たことでちょうど人数が10人になりました。そこで清瀬は温めていた箱根駅伝出場という夢を披露し、紆余曲折を経ながらも、皆で一致団結して箱根駅伝の予選会および本選に挑む、というストーリーです。ネタバレになってしまうので詳しくは書きませんが、ストレートな青春群像劇で面白かったです。グーグルで見ると、「他の人はこちらも検索」にありえない、と言うワードが出てきますが、小説だから別にいいじゃん、と感じました。自分もこんな素敵な仲間と完全燃焼できるような体験がしてみたかったです。あと、ヘタレランナーの1人として、一度でイイから主人公の蔵橋くんのような走りをしてみたかった。



「カグラバチ」(外薗健著、ジャンプコミックス)第4巻が面白かった

カグラバチの4巻が出たので、早速買って読みました。とても面白くて、一気に3回繰り返して読みました。まさか弱虫だったハクリくんが…。カグラバチは、1巻が出たときに本屋さんで試し読み用の小冊子を読んで以来、ハマっています。

この漫画の時代背景は、国中を巻き込んだ斉廷戦争(せいていせんそう)の終結から十五年後の日本。その戦争は強大な力を持つ6本の”妖刀”の活躍によって終えることができた。その妖刀を産み出した刀鍛冶が六平国重(ろくひら・くにしげ)という人物で、主人公の六平千紘(ろくひら・ちひろ)の父である。六平国重、千紘親子は戦争終結後、6本の妖刀と共に人里離れた家でひっそりと暮らしていた。しかし、ある日謎の妖術師集団・毘灼(ひしゃく)の襲撃を受けて、国重が殺され、千紘も顔に大きな傷を受ける。そして大切に保管していた6本の妖刀も全て奪われてしまう。生き残った六平千紘は、父親が最後に作り、身を挺して守り通した7本目の妖刀・淵天(えんてん)を携え、奪われた妖刀の奪還と謎の組織の殲滅をはかる、という復讐譚です。やっぱり刀がメインのバトル漫画は良いですね。週刊少年ジャンプに掲載された刀のマンガと言えば、小さい頃は「風魔の小次郎」に熱くなり、社会人になってからは「BLEACH」に厨二心が揺さぶられ、最近だと「鬼滅の刃」をこっそり集めてました。

カグラバチは今年の「次にくるマンガ大賞」の第1位を受賞されたので、今後は益々メジャーになっていくのだと思いますが、変なストーリーの引き延ばしとかスピンオフ用の伏線とか無しで作者の思いのままに進んでほしいです。