私は桂文楽の襲名披露公演の時に演じられたものをよく聞いています。ストーリーとしてはとても単純で時間も短いのですが、テンポがよくって楽しいです。調べて驚いたのですが、噺に出てくる峯の灸というのは、今でも横浜の護念寺で受けられるそうです。落語の世界がリアルタイムで体験できるというのは凄いですね。
あらすじ:登場人物は2人の江戸っ子。二人とも、とても負けず嫌い。片方の男がとても熱いという峯の灸(横浜市磯子区にある護念寺で行われていた灸)を据えてきたと自慢話を始める。曰く、1つでも熱い灸を体の片側16、両側で32個いっぺんに火をつけて耐えてきたという。それを聞いたもう片方は悔しくて、袋一杯の百草を腕にのせて炭火で火をつけ涼しい顔をしてみせる。しかし徐々に熱さが伝わってきて、やせ我慢がはじまる。石川五右衛門が釜茹に遭いながらも辞世の句を残したというのだが、「石川や浜の真砂は尽きぬとも我泣きぬれてカニと戯る」と錯乱したようなことを言う。続けて、八百屋お七は火あぶりの刑にあっても泣き言一つ言わなかった、というのだがついに耐えられなくなってしまった。百草を払い落して、一言。
「オレは熱くなかったが、五右衛門は熱かったろう」