最近は原稿の締め切りに追いかけられているのですが、そういう時に限って邪念が湧いてきます。もう番組自体が大分昔に終わってしまいましたが、大好きだったタモリ俱楽部の空耳アワーの名シーンは今も鮮明に覚えていて、それが頭の中をループしています。折角なので思い出に残る空耳を感想と共に書いてみました。
セルジュ・ゲンズブール(Serge Gainsbourg)/風変わりな少年(I'm the boy)
(空耳)お客さんに嫌われるぞ
(対応する歌詞)Le garçon qui a le don
空耳映像:高級なスーツを着た体格の良い中年の紳士がレトロな喫茶店に入り、テーブルに座る。応対に来たウエイトレスの女性は、不機嫌な表情のまま、お冷をテーブルに叩きつけ、おしぼりを投げてよこす。見かねた紳士が立ち上がり、女性に諭すように話しかける「お客さんに嫌われるぞ」
感想:曲の雰囲気と映像が完璧にマッチしています。番組で安齋肇さんも仰ってましたが空耳の部分の声色がいかにも紳士が感情を抑えて説得するように聞こえます。ジャンパーを獲得する作品であるのも納得です。ちなみに空耳のフランス語の歌詞の意味は、”才能ある少年”、だそうです。しかし日本語では説教しているようにしか聞こえません。
The Who / Now I'm a Farmer
(空耳)ごっつ遠いね
(対応する歌詞)Gourds, Pineapple
空耳映像:最初にいかにも大阪の建物(通天閣だったかな?)が移り、出張でやってきた感じのスーツ姿の若いサラリーマンが手書きの地図を片手に町をウロウロしている。どうやら目的地が見つからない様子。そこで近くにいた小学生くらいの男の子に道案内をお願いすると、快く引き受けてくれたので、男の子に導かれるままに付いて行く。しかし行けども行けども目的地には辿り着かず、ついには町を離れて田舎道へ出てしまった。サラリーマンの男はついに音を上げて男の子に言う。「ごっつ 遠いね」
感想:曲が終わりになるにしたがって徐々に静かになっていき、最後のフレーズで野菜の名前をつぶやいていく。Gourds(ひょうたん)とつぶやいてから、ちょっと間があって最後に小声でパイナップルを言って曲が終わります。「ごっつ」から「遠いね」までの間がヘトヘトになって息が上がっている男の人の様子とマッチして素晴らしい作品だと思いました。案内してくれた男の子は全く息が上がっておらず、強靭な足腰をしているのも良いです。
フィリッパ・ジョルダーノ(Filippa Giordane)/ 清らかな女神(Casta Diva)
(空耳)あのイボ痔 あのイボ痔 ああああああ
(対応する歌詞)A noi volgi A noi volgi, Ah
空耳映像:若者とお婆さんが混雑したバスに乗っている。若者はヘッドホンで音楽を聴きながら座っており、お婆さんは痔の薬が入ったバックを抱えて隣に立っている。ふと、若者が隣にいるお婆さんに気づき、立ち上がってお婆さんに座席を勧める。お婆さんは「あの(私)イボ痔(なので座れません)」と言うのだが、若者はヘッドホンをしていて聞こえない。若者は善意のつもりで笑顔でお婆さんの肩を持って座席に座らせる。お婆さんはお尻が椅子に当たった途端に「ああああああ」と高らかに悲鳴をあげて、手で虚空を掴む。
感想:イボ痔を高らかに歌い上げているだけでも爆笑なのに、ちゃんとオチがついているのが最高です。最後のお婆さんのせつない表情が美しく伸びやかな声と相まって心に残りました。イタリア語の意味は、”私たちの方を向いて下さい”、だそうです。もはや頭の中にはイボ痔しか残りませんでした。
バレンシア(Valentia)/ガイア(Gaia)
(空耳)静かな大安です
(対応する歌詞)She is going to die unless
空耳映像:昔ながらの一軒家の中が写る。柱には懐かしの日めくりカレンダーがかかっており、その日が大安であることがわかる。居間のこたつにはお爺さんが一人座っており、お茶をすすりながら庭木を眺めている。如何にも静かな一日といった趣の中、曲の終わりに「静かな大安です」と空耳が入って映像が終わる。
感想:深刻さゼロの平和な一日と壮大な音楽があっています。
ジェームスブラウン(James Brown) / Introduction It's A New Day (So Let A Man Come In And Do The Popcorn)
(空耳)棚からウィンナー 棚からウィンナー 金 イエー! 棚からウィンナー ウィンナー ウィンナー ウィンナー あ~!!
(対応する歌詞)Got to get a witness, Got to get a witness, got to aaaaa, got to get a witness, a witness, a witness, a witness, Ah!
空耳映像:お腹をすかせた空耳俳優の有田さんが食べ物を探して冷蔵庫を開けるが、食べ物が何にもない。力尽きて床にへたり込むと、ふと頭上の棚が気になる。そこで椅子を足場に棚を探っていると、棚からむき出しのウィンナーが出てきた。もう一度探ると、またウィンナーが。続いて千円札が出てきて、思わずガッツポーズ。さらにウィンナー3本とウィンナーコーヒーが出てきたところで、足を滑らせて椅子から悲鳴を上げて落ちる。
感想:棚からウィンナーが出てくるって、どんな家だと思いますが、そのシュールな発想が秀逸です。テンションが高く、畳みかけるようにウィンナーが次々と出てくるのが面白いです。途中で千円札を手に入れたので万事解決のような気がしますが、そこからウィンナーを3本とウィンナーコーヒーを取り出すのですが、棚を総ざらいせずにはいられなかったのでしょうか。ジェームスブラウンは「りんごジュース、めっちゃ酸っぱ」もそうですが、長尺になるので好きです。